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2011.11.05(土)

階段のある家


虫の息

数日前から

ご飯を食べない

水も飲まない

横になったまま動かない

目も見えなくなり

耳も遠くなり

少し冷たくなってきた






実家に猫を飼っている



実家の母が猫の様子をメールで知らせてきた

早朝のことだった



可哀想で涙が出てくる

母からのメールはこう締められていた



このメールを見た早朝から

私は何事も起こっていないかのように

過ごしていた



猫のお世話をしている母に

何か言えば良かったのかも知れん

しかし

何を言っていいか分からんかった

猫の命がもう長くないことだけは

きっぱりと分かった

共有した最低限の情報

これ以上なお伝える言葉が見当たらん

私は私の暮らしを何ら変えなかった



まだ私が小さい頃に家へ迎え入れた猫で

迎え入れた当時は生まれて間もない子猫

その猫も今年で20歳だ

猫が子猫だった頃

家族は20年も若かった



猫を迎え入れ

家中の雰囲気が大きく変わった

やがて家族と猫が共に生活するリビングが

当たり前の光景になった



猫尺度で序列が形成され

家族の中では

私を含む兄弟達が遊び役、もしくは、遊ばれ役

父は、何でも美味しい物をあげる甘やかし役

母は、猫の欲望全てを律する絶対君主の座に居た



猫は父や兄弟達を平気で噛み爪を立て

遊び

じゃれる

我々は終始、猫一匹になめられていた

格下に見られていた



唯一

猫がどんなに調子にのっていても

母の一括でしゅんと落ち込み大人しく黙る

そうして母に抱えられると

耳を伏せ、目を力いっぱい閉じ

小刻みに震え小さくなっていた

母の手から解放されても

しばらくは落ち込んでいた



猫にとって、母は絶対だった

食事やトイレなども母が担った

世話をし、世話を焼き、叱るのも母だった

そんな猫の居る家族の営みが日常の出来事になっていた



私の家は典型的な核家族で

父は単身赴任

私も家を出た

兄弟達も

ひとり、またひとりと、家を離れた

家に残ったのは、母と猫



たまに帰省すると

猫がいる

母がいる

帰省と、次の帰省と、また次の帰省と

私が知っている猫は、時折増える点のようなもの

おそらくは父にとっても

他の兄弟達にとっても

点のようなもので

点と点を繋ぐ線は想像と伝聞に頼るしかない



うちの家族に

現実で

猫と暮らす家庭

という線を引き続けたのは母だ



階段をのぼれなかった子猫が

自由に階段を上り下りするようになり

また階段をのぼれなくなった



よぼよぼの足どり

ウロコさながらに固まり、バサついた毛並み

鳴き声はしゃがれ

目がしらが黒ずんでいった

日向で眠り

近づくと起きてきて

私がからかおうと動かす腕や指に

面倒くさそうな動作ですり寄りながら臭いをつけた

丹念に、こすりつけていた

喉を鳴らす音が小さく聞こえた



私の猫との思い出はこれが最後になった



冒頭に書いたメールを受けて3日後

猫は死んだ

母が看取った



未明に知らせを受けてすぐ

母へ連絡し、少し話をした

母は少し笑いながら思い出を口にした



網戸にへばり付いていたの、覚えてる?

ご飯の時、鮭もってかれたっけね

お隣さんの庭で雀たべてたって怒られたわ

トイレに行くまでにもらしちゃうようになってね

あの時に迎えたから、やっぱり20歳だよね?



年数を数えると

20歳で間違いなかった



20年前、お祭り騒ぎで猫を囲んだ家

父の横にスタンバイする猫と囲んだ夕飯時の食卓

そのリビングに

今はひとり、母がいる



│posted at 22:02:06│
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うさ枕

Author:うさ枕
性別:♂
うさぎの枕で寝る暮らし。
うつ病とたたかう暮らし。
サラリーマンですが、うつ病と診断され今は離職中です。社会復帰に向かうよう邁進中です。
ですが、進むことあり、戻ることあり。
其の日常が当たり前として通り過ぎるのを避けるべく、ブログを始めました。
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